DOCTOR'S VOICES

CASE#002ハイレベルなPCI治療例をクラウドで共有

症例ライブラリーで世界の治療技術の底上げをめざす

国や地域の環境によって異なる専門医の治療経験の格差は、一般の患者さんに届く医療格差に直結する。


国内外で自身が手がけた膨大な治療例をe-casebookで公開する角辻氏の活動は「世界の心血管治療レベルの底上げ」へ向かう一筋の光となるか。

大阪大学大学院医学系研究科 国際循環器学寄附講座 寄附講座教授

角辻 暁 氏

日本のPCI治療は世界最高水準

「困難な手術」というと、最新医療を求めて海外に渡航するのが一般的なイメージだと思いますが、心血管カテーテルを用いた冠動脈インターベンション治療(PCI治療)においては、欧米やドイツなど医療水準の高い他国と比べても、日本の技術が圧倒的に優れています。日本では世界に先駆けて「血管内超音波(IVUS)」が保険適応となったことが大きな理由だと思います。カテーテルの先に超音波機能を持たせたIVUSが保健診療で使用可能になったことで治療結果が改善しただけでなく、治療そのものの理解が深まったことが日本型PCI治療が世界基準のPCI治療からはるかに高度な治療になりえた大きな理由と思われます。

高いPCI治療水準が患者さんのメリットに直結する

PCI治療では、カテーテルと言われる細い管を手首や足の付け根から血管内に挿入して心臓の血管の病気の部分を治療します。治療そのものは3時間程度で完了し入院期間が短いことが特徴です。多くの患者さんは手術翌日には普通に歩いて退院することができます。一方、PCI治療が困難と判断された患者さんは「投薬治療」もしくは「開胸手術」という選択になります。開胸手術では患者さんの身体の負担は重くなり長い入院期間が必要ですし、投薬治療では心臓の血管の病気の部分の治療は行われないので心臓の筋肉への血液の供給は制限されたままとなります。一般に治療困難と判断されるような患者さんの状況や病気の状況でも PCI治療が可能になれば患者さんのメリットはとても大きいことは言うまでもありません。

「国際循環器学寄附講座」の立ち上げ

個人的には2004年にマレーシアで上記の血管内超音波(IVUS)を用いた複雑PCI治療をする機会を得てから日本国内だけでなく海外での活動を行うようになりました。さらに上記のマレーシアでの治療の結果やこの時期に招かれた学会での治療成績の報告を聞いたアジア・中東のドクタからの招聘により世界中の多くの国々でPCI治療を行い、PCI治療に関する教育的な仕事を行うようになりました。この活動を行い・拡大していく中で、「個人的な経験知識の増加・PCI治療レベルの向上」だけでなく「当該国・地域の先生や医療スタッフに対するPCI治療の教育的な貢献」および「日本製の治療器具・治療装置の価値を高めマーケットを拡大するという企業としてのメリット」、全てにおいてポジティブな価値を持つことに気付きました。しかし通常の病院勤務で上記の活動を行うことには限界があり(一般病院では病院を離れることには制限がある)、さらには自分一人の業務・行動では継続性が乏しい、という限界があります。これらの問題点を解決するためには「通常病院勤務ではなく」「長期の継続性をもつ」組織が必要と考え 今の国際循環器学寄附講座を大阪大学に作ることとなりました。

知識の共有がレベルアップの第一歩

現在、国際循環器学寄附講座として世界各国での教育的な仕事を行っていますが、そこで直面している大きな問題が「知識を共有するための時間の制限」です。実は、例えば日本国内の同じ病院に勤務している医師の間でも 各医師は通常業務で忙しいため「共有できる時間」はカンファレンスなどに限られており、これはすなわち「共有できる知識」が限られることにつながっています。そしてこの「知識を共有するための時間の制限」は我々が海外に行って治療する際にはさらに大きな問題となります。通常の海外案件を例とすると、一つの病院で行うプログラムは1-2日。業務の多くの時間は実際の治療を行っており その途中のポイントでは説明を行うものの断片的な説明になってしまいます。さらに継続的なプログラムであればいいのですが、初めて会い・一緒に仕事する場合には相手方のレベルそのものも分かっていない状況で「相互理解・知識共有」を試みますが・・・ 根本的な無理・限界があります。この問題を解決するには「知識を共有するための時間の共有」が必須です。それを実現化してくれるのが現代のネットを使った情報共有サービス・システムになります。

e-casebookの導入と活用

知識・情報の共有と書きましたが、我々の治療における「知識・情報」は非常に詳細な画像情報に基づいています。今の時代、ある程度のレベル・クオリティの画像情報を共有することはさほど難しいことではありません。YouTubeですら「ある程度のレベル」であれば画像情報の共有が可能です。しかし我々が求めている「世界最高レベル」のクオリティを提供してくれるサービスは今まで皆無でした。e-casebookはこれまでの努力によって「非常に高品質の画像」を「十分な速度」で提供することができています。我々のニーズに応えてくれる唯一のサービスとなっています。

今世界でのPCI治療は増加の一途をたどっています。それは「低侵襲治療」を患者さんが求めているからに他なりません。この世界のPCI治療において 先行している我々の知識や経験を共有し「PCI治療が困難だから・危険だから」という理由でPCI治療ができない患者さんにもPCI治療を安全・有効に艇庫揺するために e-casebookは非常に有効な手段・サービスであることは間違いありません。

実は今でもe-casebookは完全に成熟したとは言えない部分があります。しかし最初に菅原社長からe-casebookのアイデアと具体案を見せてもらい、2012年からは現在の国際循環器学寄附講座の全身である先進心血管治療学寄附講座でスタッフ間の情報共有ツールとしてe-casebookを日常的に使用してきた経験から「e-casebookの進化は半端ない」と断言できます。今後は世界中のドクタ・コメディカルとe-casebookを通じて情報を共有し、e-casebookとともに世界のPCI治療のレベル向上に貢献できればと思っています。

e-casebookのもたらす将来・未来

今、e-casebookでは FORUMという形態の新しいサービスを開始しました。そのFORUMではこれまでの 高品質画像情報だけでなく「プレゼンテーション」を併用・リンクすることによって、より深い知識・経験の共有を行おうとしています。例えば、PCI治療の最も根底にある「力学的検討」をプレゼンテーションと具体例を絡めて提示、知識・経験の共有を行うことで世界のPCI治療のレベルの向上、さらにはPCI治療そのものへの理解の向上が見込めます。

一つ一つの症例に隠された真実をも共有できるツール・サービス、それがe-casebook・FORUMだと思います。
今後は世界中の多くのドクタ・コメディカルと一緒に最高のPCI治療を行う、そのための議論をe-casebookで行いたいと思っています。