DOCTOR'S VOICES

CASE#003PCI若手医師への日常的症例相談

症例の共有で若手医師の「判断力」を養う

心血管カテーテルインターベンション治療を始めたばかりの若手医師は、学会や研究会に参加する機会が少ないため、書籍や身近な先輩医師の指導による情報しか得ることができない。


自身の経験から、若い医師こそ様々な症例に触れて、自分で正しいと判断できる情報・知識を得るべきだと考える小堀氏は、広い視野を持って治療を行える専門医を育てるために、e-casebookで若手医師向けの会員限定フォーラムを運営している。

戸田中央総合病院 診療科 心臓血管センター内科 副部長

小堀 裕一 氏(日本内科学会認定医、日本循環器学会認定専門医、日本心血管インターベンション学会認定専門医)

多様な情報は若い医師にこそ必要

自分の経験で言うと、若い頃はとにかくインターベンションがうまくなりたくて、たくさん数をこなして、良いオペレーターになりたいと思っていました。
大学病院で研修していたときは主に3人のオペレーターから指導を受けていました。ところが三人三様の言葉通り、ひとつの疾患に対しての治療コンセプトが三者で完全に同じという事はありませんでした。そこでPCIにおける治療方針などについては出来るだけ3人の先生それぞれに聞くようにし、そのなかで、「この症例については、あの先生に教えてもらったことが役立つ」と自分自身で判断していました。いつしかできるだけ様々な意見を聞き、その考え方を取り入れ、かつそのなかでどれが適切か判断するということが習慣となっていきました。これは現在においてもいいオペレーターになるためには重要なポイントであると考えています。
このような経験から、若い先生は、外に出ていろんな人の話を聞いた方がいいし、ずっと病院の中にいて偏った情報で治療することはよくないと思います。

ERNEST CLUBの立ち上げ

最近になって日本各地の研究会などに出させてもらうようになり、若い先生とお話しする機会が増えました。
自分の若い頃と同じように、彼らはとにかくインターベンションがうまくなりたい。そのために学会などに参加して、もっと多くの知識を得たいと思っています。しかし、大規模な学会となると、通常はそれなりに役職のある医師が参加します。新米の医師は、学会はもちろん、そもそも日々の治療の場数をこなすのに手一杯で、小さな研究会にすら行く機会も時間もない。
若手の医師は、主に自分の上司から、知識なり情報を得ています。もちろんその情報は正しいものだと思いますが、例えば心血管カテーテル治療という専門的なフィールドでは、治療の原則は同じだけれども、専門医が10人いたら、治療の微妙な細かい部分は10人それぞれやり方が違っていたりします。やはり若い先生はいろんな専門医の意見をどんどん聞いて、自分がいいと思ったものを選んでいく方が、将来的に専門医として伸びると思うんです。自分なりの治療法を思いついても、上の先生の方針と違うからという理由で断念していたら、可能性が狭まるじゃないですか。このような事態を解消するために若い先生を対象とした小規模の研究会の開催も行っていました。

そんな中、e-casebookからフォーラムに関して何かいいアイデアがないかというお話しを頂きました。
オンラインで症例を検討する場があれば移動中でもスマートフォンで見られるし、いつでもどこでも手軽に最新の技術やデバイスやエキスパートの先生の症例に触れることができ、若い先生にメリットがあるんじゃないかと考えました。
それまでe-casebookでは土金先生や角辻先生などのエキスパートを目指す医師向けに特化したフォーラムが多くて、実は若手の医師にとっては少し敷居が高かったりします。そこで今回お誘いを受けて、初・中級者向けのフォーラムをやらせてもらうことになりました。それがEvolution and Revolution of New Era interventionaliST Club(新時代のインターベンショナリストの進化と革命)、略して「ERNEST Club」です。まだエキスパートの位置に手が届かない人たちが、手軽に情報を手に入れる場所を提供することに意味があると思います。

初・中級者レベルの内容で

e-casebookの操作は、最初はめちゃくちゃ時間がかかりましたけど(笑)、じきに慣れました。パソコンで症例データをアップロード・編集をして、あとからスマートフォンでちょこちょこ文字修正をしています。
初・中級者が疑問に思う症例、難易度的には初級から中級くらいのカテーテル治療の話をメインに症例を提示し、参加者が疑問点を聞き、それに僕が回答するという流れで行っています。ただ参加者が増えてくると初・中級者の集まりとはいえ技術の幅が出るので、全員が望むような症例選択をするのが難しいです。たとえば土金先生のフォーラムだとCTO(慢性完全閉塞)病変治療を載せていれば参加者はみんな興味を持つけど、CTOをやったこともない初級者にCTOの話をしても、理解してもらえない。逆にフォーラム内にはある程度経験がある中級者もいるので、基礎的なことばかり載せると飽きられてしまう。そのさじ加減が悩みどころですが、CTO-Complex(複雑病変) PCI-合併症-またCTOを載せて……と、今はみんなが飽きないように、いろいろなレベルの内容を織り交ぜています。

フォーラムとリアル研究会との違い

フォーラムを始めてみて、リアルな研究会と比べて一番の違いは、参加者の生の反応が分からないことです。当たり前ですけど(笑)。Face to faceだと、興味をもっている顔をしてるなとか、質問もあるじゃないですか。でもオンラインだと楽しんでもらっているのかなどの反応が分かりません。知り合いで参加者になっている人に会うと「勉強になっている。」とか「この前アップしてた症例ってどういうことですか?」など聞かれることもあるんですけど、フォーラムのコメント欄に書いてよって思うわけです(笑)。何でもいいから質問してくださいと伝えているのですが、やはり初・中級レベルの参加者にとっては、名前や質問内容が残るので、コメントを書くのも敷居が高いみたいです。これについては、例えば場合によっては匿名でコメントできるようにするとか、何らかの方法で解消したいと思っています。
リアルな研究会では却って聞きづらいような初歩的な質問も、オンラインでならできるとしたら、それもフォーラムの可能性のひとつではないでしょうか。

フォーラムで育てる若手医師の「判断力」

投稿している症例は、ストックしているものと、オンゴーイングの日常臨床でやっている症例と半々で、やはり若い先生が多いせいか合併症の症例で反応が多い印象です。PCI技術者にとって、誰しも必ず最初に経験するのが合併症です。そのときに知識があるかないかで、救える命も救えなくなってしまう。いかに情報を蓄えておくかが一番重要なんじゃないかと思います。
多くの研究会では特殊な治療や難しい治療を発表するものが多いと思いますが、僕のフォーラムには馴染まない。それよりもデイリー・プラクティスの症例で、これから伸びようとしている若手のみんなと共有すべき情報、もし僕が若い時にこういうやり方があると知っていたら役立つし勉強になると思う症例を挙げています。経験の少ない若い医師でも、知識や情報を得ることで、臨床時の「判断力」を養うことができる。かつての自分の経験から、このフォーラムで実現できるはずだと確信を持っています。

e-casebookに期待すること

手軽にスマートフォンでもチェックできるので、暇な時にアプリを開く感覚で、いろんな人に使ってもらえるサービスですね。シンプルな導入にも関わらずDICOM動画もしっかりと見ることができるし、画像に直接指示を描き込めてコメントもでき、最新情報がすぐ手に入る。症例相談をするにはうってつけのシステムです。インターネットさえつながれば世界中の誰とでもやりとりができる。エキスパート同士のハイレベルな症例検証にも、修行中の若手医師の教育にも。e-casebookの汎用性をもっと多くの人に理解してもらえたら、様々な使い道で利用者が増えて、きっとより良い医療環境につながるのではないでしょうか。