DOCTOR'S VOICES

CASE#004冠動脈カテーテルインターベンション専門医の教育

「戦略的カテーテル治療」をオンラインで指導

今年(2018 年)4月にいち早くe-casebook Forumで「土金塾」を立ち上げた土金氏は、多い時には年間200例以上の慢性完全閉塞患者に対してカテーテル治療を手掛けてきた第一人者だ。国内外でのライブ手術の開催など後継専門医の教育も熱心に行っており、外部の若い医師を豊橋ハートセンターに受け入れ、実際に手技の指導を行うワークショップを開催してきた。
経験の積み重ねからなる治療の「戦略」を、広く医師たちに伝授したいと考える土金氏のForumは、多数の参加者で賑わいを見せている。

豊橋ハートセンター 循環器内科 部長

土金 悦夫 氏

「ショータイム」にとどまらない専門医教育

僕が力を入れて行っているのは若い先生の教育です。よくある従来の研究会スタイルだと、治療方法を若い先生にただ見てもらうだけで、どうしてもショータイムになってしまい、「すごい!」と感動はされるものの教育的に意味がない。そこで考えたのが、僕が口頭で指導しながら若い先生に患者様の手術をしてもらい、その様子を他の若い先生に見てもらうというワークショップです。一つの症例をみんなで共有して一人一人の経験値を上げるのが目的で、この8年で100回以上行っています。

空間の制約をオンラインで解消

3年前にe-casebook をやらないかというオファーがあったとき、このシステムを是非活用すべきだと思いました。研究会でのライブ手術で術前症例を出したことはありますが、僕が戦略を述べて終わりのほぼ一方通行。しかしフォーラムという形にすれば一方通行ではなくなります。以前からライブ手術の資料をアップロードしているので、インターネット上で情報をやり取りすることに関しては、全く抵抗ありませんでした。

オンラインでやるメリットは、みんなが集まれる「場所」を作れること。様々な制約があり研究会に出られない先生もいます。特に若い先生は院内での臨床で手一杯だから外出しにくい。リアルな研究会だと会場に入れる人数の限界があるけど、e-casebook Forumはネット環境さえ整っていれば世界中どこからでも見られるので非常に便利な「場所」です。

腰を据えた症例検証で経験値を上げる

質問をする側からすると、オンサイト(現場)で直接僕に質問するときはある意味覚悟が必要だと思います。実際、若い先生から忙しい僕に質問することは申し訳なく聞きづらいと聞いたこともあります。しかしオンラインの場合、時間を気にせず質問を練られるし、派生した設問もできる。治療以前に「そもそもこの治療は行うべきなのか、行う必要があるのか」など根本的な部分に立ち返ったディスカッションもできます。日々のオンサイトだと一旦治療方針が決まったからには「行うのみ」の一択で、限られた勤務時間内でのジャッジが正解だったのかいちいち振り返る余裕を持ちにくい。Forumを利用すれば、症例をじっくり検証する時間を自分のペースで確保して、いつでも相談や共有ができる。今後もメンバーに入って見てくれる先生が増えるほど、またアップロードされる症例が多様かつ多くなるほど、全体の経験値が上がり、よい結果につながると考えています。

オープンスペースで成熟した議論を

今年4月からe-casebook Forumで土金塾がスタートし、まず初めに上げた症例は「Bidirectional Approach不成功後のLAD CTO」でした。これは今年3月の終わりに行われた比較的難しい治療で、僕らのように手技に慣れた医師でもちょっと難しい症例です。ましてや若い先生方にとってはもっと難しくハードルが高いからこそ、ディスカッションの質が上がります。
2症例目以降はForum参加者が症例を上げていく形で、基本的には最初と最後に僕がコメントします。みんなで揃って同時刻にディスカッションを始めるわけではないので、ある程度時間をおかないと成熟した議論にはなりません。月に1症例くらいアップする頻度でも十分価値があると思っています。
現在のForum参加者は概ね予想通りの人数です。今まで約3年間、クローズのe-casebook Groupで土金塾を行っていたのですが、意見を書き込む人はだいたい決まっていました。オープンのForumになったことで、今回初めて土金塾に参加しする人など、いろんな人が書き込んでくれて僕も楽しんでいます。

画像や動画のクオリティーはe-casebook の強み

僕は大抵夜の空き時間にForumをチェックしています。画像や動画が必要な教育コンテンツだと、日中人と約束してカメラで現場の撮影をしてもらったりと、何かと大掛かりになって大変ですが、Forumは手持ちのデータを直接アップできるなど、導入がとても簡便です。初期のe-casebook からDICOM画像について随時改良してもらっているので、ディスカッションを行う上では十分なクオリティーになっていると思います。細かい血管、例えばinterventional collateralなどの話になると、解像度的にまだまだ判断が難しい部分があるものの、画像・動画データを共有しての議論に非常に機能的かつ扱いやすいシステムなので、画像・動画を扱う先生であればぜひe-casebookを試してほしいです。

垣根なき「戦略的治療」を共有

僕も年ですし、これからやらないといけないことは教育しかない(笑)。僕が一人で治せる患者さんは限られてしまうけど、治せるドクターを増やしたらもっと救える患者さんが増える。今はガイドワイヤーなどの道具も増え、それによるアプローチも増えて戦術が多岐に渡るので、広く症例を募ることができるForumがとても有効なのです。
カテーテル治療、特に待機的な冠動脈慢性完全閉塞病変を扱う上で大事なのは「安全」「手技成功」「効率」の3つだと考えています。ベテランになるとこの3つをクリアする最善の戦略パターンが身についていますが、若い先生は経験がないので、最初から自分で戦略が組めない。また、頭で戦術がきちんと組めたとしても、実際の手技も大事。僕ら経験のある医師が正しいと思っているやり方を、多くの医師に引き継いてもらうのが大切だと思います。
良い治療をみんなで共有する中で、自由で活発な意見交換が阻害されるようなことがあってはいけません。オンラインでのForumなら、派閥や学閥といった人間関係の壁を取り払って、若い先生が自由に治療方針を選べる、いい影響を与えられると強く信じています。