DOCTOR'S VOICES

CASE#006広島PCI専門医同士の小さなコミュニティで日常的な検討会

ガチンコPCI議論で切磋琢磨の合宿所

2017年8月に立ち上がった「広島PCI塾」は広島市民病院循環器内科主任部長の塩出宣雄氏が塾長、他6名の広島の塾生が参加している地域に特化した小さなグループ。呉医療センターの岡氏は若手医師の意見の促しなど、塾長と塾生をつなぐ”橋渡し”のようなポジションだ。
所属病院こそ違うが「広島」をキーワードに地方におけるPCIの活発な意見交換の場としての結成されたこのグループは、言わば「合宿所」のような存在と岡氏は話す。

呉医療センター 循環器内科 医長

岡 俊治 氏

地方に特化したオンラインミーティングでアクティブな議論を

塩出先生との出会いは、約6年前のCVITの地方会。以前から先生のお名前は存じ上げていたんですが、所属病院も違い、それまでなかなか話す機会がありませんでした。「急性冠症候群の責任病変である鈍縁枝起始部病変の治療のために回旋枝本幹のCTOを治療しculottes stentを行った一例」という発表をした際、「すごいね!」と塩出先生から話しかけていただき、それ以来仲良くしていただいております。
広島PCI塾の前身は、同じようなコンセプトの小規模な研究会(small meeting)で、年に1回行われていました。広島県自体、small meetingが割と多いと思います。大きな研究会はあまり行わず、中堅・若手クラスの選抜されたメンバーとトップのご意見番の先生と、だいたい5~10人規模で各メーカーが主催しているという感じですね。
e-casebookを知ったのは、医療機器メーカーさんに土金悦夫先生主催の「土金塾」を紹介していただいたときです。広島にいるとなかなか聞けない中日本の先生のお話が聞けるということで参加しました。その後、今から1年半ほど前に、パイロット版研究会として塩出先生塾長の広島PCI塾を立ち上げるというときに、塾生メンバーとして加わりました。
塾生たちは皆顔見知りですけど、所属病院はバラバラ。塩出先生にいたっては同じ病院で働いたことが一度もありません。もしリアルなsmall meetingを立ち上げようとしても、集まる機会は何か月に1回程度で、そのときも全員参加できるわけではない。e-casebookであれば時間差をもって会うことができます。同じ時間同じ場所に集まらなくても意見交換ができるのは、e-casebookの最大のメリットだと思います。
塾のタイトルに「広島」と記載するからには、やはり地域密着型で遠慮無く意見を言える者同士で議論を行いたいと思っています。コミュニティが大きくなると人間関係にも気を遣い、他人の目を気にしてなかなか発言ができないと思うけど、少人数だからこそ発言しやすく、アクティブな意見交換もできて仲も深まります。ネット上でもリアルでも人と人との関係性は同じで、範囲を決めて少人数でグループをつくる、そうすると熱い議論を交わすことができる、これが地域密着型のe-casebookのメリットではないかと思います。きっと大きなコミュニティと地方の小さなコミュニティではe-casebookの役割も異なるのではないかと思います。

厳しい意見や討論で「広島の共通認識」を磨く

広島PCI塾では治療の細かい手技について意見交換するだけではなく、治療前症例だったら検査項目の段階で「そもそもこれは適切な治療なのか」など、客観的な手厳しいツッコミが入る場面も多くあります。AUC(Appropriate Use Criteria; PCI について虚血性心疾患の診断と治療にかかわるエキスパートの意見を集約する形での適切性基準)についても、非常に高い意識で意見がやりとりされるので、ただ自分の手技を披露したいだけの症例はツッコミが入り自然に淘汰されています。
症例投稿の流れとしては、誰かが投稿したデータについて塾生と私が自分の見解を発信し、最後にご意見番の塩出先生が全体像をコメントするという形です。例えば若い先生からの「これはどういう治療をしたらいいでしょうか?」という相談があり、私が中堅の立場で「こう思っている」と意見して、塩出塾長が「違う」ということもあります(笑)。意見の相違をどのように包括するか、共通認識をどう見出すかを各々が厳しい目で判断する。ディスカッションで他の医師から出てきた意見は、私も正しいと思ったら実際の治療に取り入れています。また、「自分はその選択をしないけど、こういう意見があるんだな」という発見もあります。参加されたドクターは自分の病院のチームの治療戦略が、広島全体の感覚として正しいのかを認識する場所になっていると思います。

活発なコミュニティを作るには

e-casebookの小規模グループが活発なコミュニティとして成長するには、グループの核となる塾長と、その人についていく塾生に加え、両者を繋ぐ役目の先生が必要じゃないかと思います。
例えば、ご多忙な塩出先生が、複数のコミュニティを掛け持つことは難しいので、そのような核になる先生をまず探すのが重要なことだと思います。
あと、コミュニティを大きくすればするほど、関わりが薄い人は発言しにくく、関わりの強い人の発言が多くなり、その結果、発言者が固定されてしまいますので、学会や研究会などでつながりを強くした状態で、小さなコミュニティをたくさん作ることを考えてもいいのかなと思います。リアルな研究会があって、そこで知り合って、続きはe-casebookで、という形ならいいと思うんですけど、いきなり全然知らない人とのディスカッションは控えめな人には正直難しいです。
今の広島PCI塾のメンバーは、ある程度ガツンと言われても凹まないで、「また言われた」という感じです。それはお互いの人間性や性格を知っていて、信頼関係が根本にあるからこそだと思います。大きなコミュニティだと、知らないメンバーがどう見ているか分からないので、発言しにくい。それが大きなコミュニティにおけるディスカッションの弱点だと思います。大きなコミュニティは映画館で映画を見ている。一方で小さなコミュニティは家で皆で話しながら映画鑑賞をしているといった感じでしょうか?

“サクサク感”が課題

e-casebookから新着コメント通知メールが届いたら、夜家に帰ってパソコンでじっくり症例をみてコメントを考えます。ウェブ上で医用画像が見えるのは非常に便利ですが、決して軽いデータではないので、できるだけ安定したネット環境下で見るようにしています。ネット環境の悪い病院でもそうですが、「高速Wi-Fi」と謳っているホテルでも、症例閲覧が重い時がありますので。
ま、いいホテルに泊まれば別なんでしょうけど(笑)
やはりもっとサクサク動く仕様になって欲しいです。例えばチャットの様に軽い感じでコメントできるような。スマホでパパっと使えるようになったら良いですね。「コメント機能のみ」など機能を落としたアプリとか。そうすれば休憩時間でもスマホでチェックできますし、そういうことができるようになったら見る人が増えるかもしれないですね。

離れていても尊敬できる先生のもとでディスカッション

広島PCI塾のようなWeb上の研究会は広がっていった方がいいと思います。皆さん多忙でなかなか時間を合わせて集まるのが難しいので、時間差でみんなに会えるのが最大の魅力だと感じています。大きなコミュニティと小さなコミュニティがそれぞれの役割を果たし、尊敬できる先生とのディスカッションを経験に変えて自分もどんどん成長していきたいと思います。