DOCTOR'S VOICES

CASE#007オンラインでDWIBS(ドゥイブス)法〜ガン検査に関する研究を推進

痛みなし、造影剤注射なし、被曝なしで安価。最新ガン検出法の普及に挑む

MRI(磁気共鳴画像診断装置)で、ガンを検出できる。2004年、当時東海大学講師だった高原太郎氏と、東海大学医学部画像診断学教授の今井裕氏らの研究グループが考案したDWIBS(ドゥイブス)法だ。呼吸したまま検査できて放射線による被曝もなく、検査費用は低価格。海外からの評価も高く、受診者に優しいDWIBS法を広く臨床の場に普及させるために、高原氏はe-casebookでオンライン研究会を立ち上げた。

東海大学 工学部 医用生体工学科 教授

高原 太郎 氏秋田大学医学部卒・放射線科専門医

受診者に負担の少ないDWIBS法を活用したガン検査

DWIBS法とは、MRIを使って体内のガンを調べる方法です。周囲の水分子の拡散速度が速い正常組織と比べて、ガン組織は、細胞密度が高く水分子の拡散速度が遅くなることを利用し、MRIでその差の信号(=病変部)を検出します。
拡散強調画像は、拡散運動という微小な動きを検出するので、呼吸運動のような粗大な動きのある体幹部では画像化できないと信じられてきました。しかし呼吸運動と拡散運動の性質の違いにより、実際には呼吸運動下においてもガンの信号が検出できることを発見しました(DWIBS法)。最近では全身のガンの検出だけでなく、乳ガンを簡単に見つける検診にも応用しています。
ガンの検査としては、造影CTやFDG-PETが一般的です。DWIBS法は、造影剤を使わず、また放射線被曝がありません。ですから喘息の人にも用いることができます。またFDG-PETは糖尿病の患者さんには不向きなのですが、DWIBS法は、問題なく撮影できます。またPETでは必要な事前安静も不要です。さらに、FDG-PETの1/5ぐらいの費用で検査を受けることができます。MRIは普通CTよりも高い検査ですが、造影剤を用いないので、造影CTよりも安いのです。このような特長から、ガン患者さんにとても優しい検査ということが言えます。

安いから普及するというわけではない

DWIBS法を考案した当時、東海大学医学部に勤務していました。2004年5月3日の毎日新聞全国紙の朝刊1面に掲載されて大きな話題となりました。またDWIBS法を使ったガン研究論文を出したのがきっかけで、オランダのユトレヒト大学に招かれ、2007年から2010年までDWIBS法を教えながらスタッフとして常勤しました。その後、東海大学工学部の新設学科である医用生体工学科の教授として帰国したのですが、当初想像したよりDWIBS法が普及していないなと感じました。
ひとつの理由は、逆説的ではあるのですが、「DWIBS法はFDG-PETと違いお金がかからない」という点です。DWIBS法の料金がFDG-PETの1/5とすれば、高品質で安価な検査が受けられて患者さんにとってはいいことだらけなのですが、穿った見方をすれば保険点数も当然1/5。病院や製薬会社の利益には必ずしもなりませんから、率先して宣伝してもらえるわけではないのです。

DWIBS法の普及を決意した父のガン

2012年11月に私の父がステージ4の進行大腸ガン多発肝転移という状態で見つかり、その1年後に亡くなりました。DWIBS法が世の中に広まっていれば、父のガンがもっと早く発見できたのではないかと、自分を責めました。この辛い経験から、浜松の病院で、DWIBS法を用いたガン検診もはじめました。
また、学術的な啓蒙を目的として「Body DWI研究会」(注:Diffusion=拡散、Weighted=強調した、Imaging=画像)」という、拡散強調画像に関する研究会を設立し、研究の推進、知識の交流を行っています。2015年からは、研究会の開催を年1回から年2回に増やし、今年2月で第10回を迎えました。参加者は毎回コンスタントに250人程度で、勉強熱心な技師さんが多いのが特徴です。

リアルの研究会とオンライン研究会の並行運営

e-casebookのように匿名化した患者さんの症例を用いてインターネット上でディスカッションする、という経験は今までありませんでした。人づてに「面白いサービスがありますよ」とe-casebookを紹介してもらい、私が主催している研究会で、参加者との意思疎通に使えるかもしれないと思って導入しました。
時代を追えば追うほど細分化された医療について、それぞれ研究会の数は増えています。技師も医師も忙しく、日時を合わせて研究会会場に行くという行動が難しいのが現状です。数ある研究会の中でも特定のジャンルの講演や興味のある発表をどうしても聞きたいという場合、実際にその会場に行かなくてもオンラインで発表内容を見ることができれば、ある程度内容を理解できます。私が主催しているのは実際のリアルの研究会と、オンラインでの研究会を組み合わせたフォーラムです。
実際にオンライン研究会を運営してみて良いと思った点は、当日シラバスなどの印刷物を用意する必要がなく、オンライン上にデータを置いて「いつでもどこでも見てね」という環境。そしてより経済効率よく研究会を運営することが求められる昨今、e-casebookのようにオンラインで運営することにより、会場代、印刷代などの予算を縮小し、より効率よく低予算で参加者の利便性も高い研究会を開催できるのはとてもありがたいと思っています。

今後e-casebookでやりたいこと

放射線科はいくつかの画像を比較することでディスカッションが成立するので、今後e-casebook上で少なくとも4つくらいの画像が同時に表示できるようになればいいですね。もう一つはDICOMデータがせっかくあるので、DICOMタブの座標を組み込んで、同じ方向の4種類の画像が同期できるとか、ハイレベルなデータ処理がスムーズにできると理想的です。
これからは、ライブ配信のようなことをやりたいです。オンライン上でも日時を合わせるという制約がありますが、ライブ限定にすることにより、勉強熱心な人に参加してもらえるのもいいですね。例えば循環器のライブ手術映像だと自分が手術している気分で視聴者も夢中になって観てしまうと思いますが、施術データが静止画像で済んでしまう放射線科だとそうはいかない。治療事例のスライドだけを見せてもつまらないので、スライドと演者によるガイドで生動画を配信すると魅力的になると思います。e-casebookを含め、独自の地道な活動を通してDWIBSの読影方法や活用法を専門医に広めることで、DWIBS法によるガン検査が一般の皆様に届く日を目指して突き進みたいと思っています。