DOCTOR'S VOICES

CASE#009新治療”TAVI”の教育的ビデオ配信

リアルタイム映像配信だからこそできる双方向の経験共有

帝京大学循環器内科に所属し、帝京大学のTAVIチームを立ち上げ、さらにTAVI※のプロクター(指導医)として新規TAVI施設の指導を行っている渡邊氏は、e-casebook LIVEでのライブ映像コンテンツ「TAVI症例について考える」を立ち上げた。
まだまだ新しい治療法であるTAVIを若手医師に伝授するだけでなく、治療に慣れている医師の日常診療にも役立つコンテンツ配信をめざす。
※TAVI=Transcatheter Aortic Valve Implantation の略。 経カテーテル的大動脈弁植え込み術。胸を開かず、心臓が動いている状態でカテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓に留置する治療法。

帝京大学医学部附属病院 循環器内科 講師

渡邊 雄介 氏

若手に広めたい新治療「TAVI」

筑波大学医学部卒業後に研修医、榊原記念病院での循環器診療の期間を経て、フランスの「パリ南心臓センター」留学時には主にTAVIを学び、2013年に帝京大学に所属してからは院内のTAVIチームの立ち上げおよび新規TAVI施設のプロクターとして活動しています。TAVIは重症の「大動脈弁狭窄症」に対する新しいカテーテル治療法で、新たにTAVIをはじめようとする医師が勉強する場が少ないのが課題でした。
そこで出会ったのがe-casebookです。
e-casebookで症例検討ができることは、実は以前から学会を通して知っていました。
2019年4月から「e-casebook LIVE」という動画配信サービスが始まったのをFacebookで知り、同年8月に配信した、木下順久先生(豊橋ハートセンター)と上妻謙先生(帝京大学)のワークショップ「分岐部病変にこだわる」にてオペレーター(術者)として参加しました。その時に、ハート・オーガナイゼーションさんから「TAVIに関する教育的ビデオの配信をやりませんか?」とお話をいただきました。まっさきに浮かんだのが、このTAVIの業界で有名な白井伸一先生(小倉記念病院)とタッグを組んでTAVIにまつわる教育的内容を、自分も勉強させてもらいながら楽しみつつ発信できたらいいなという案でした。
そして実現したのが同年12月に配信した、白井伸一先生(小倉記念病院)と僕の「TAVI症例について考える #01 大動脈弁狭窄症のWire弁通過と左室Wire留置を極める」という症例検討会です。過去に行ったTAVIの手術映像を見ながら、白井先生と僕とで症例解説する内容です。

リアルタイム配信で双方向の議論の場に

過去にWeb講演会でプレゼン発表をしたこともあり、e-casebook LIVEでの配信で、「オンラインだから」といって特別に心理的なハードルの高さはありませんでした。
今回のライブ配信で力を入れたかったのは「リアルタイムならではの双方向での経験共有」です。「一方向のレクチャー動画」ではなく、TAVIのエキスパートである白井先生と一緒に症例解説を進めつつ、画像や手術動画、お互いの考えや手法を織り交ぜながら議論すると、一般的な講義以上のアウトプットができるのではないかと考えました。TAVIをはこれから始める、もしくは始めたばかりの医師だけでなく、TAVI治療に慣れている先生が見ても日常診療で更に役立つように、より細かい手技にフォーカスした内容になったと思います。
実際、チャット機能を使って視聴者からの質問に回答したり、リアルタイムでアンケートを実施したり、視聴者とインタラクティブに時間を共有できたという手応えを感じました。

オンライン体験とアーカイブで2層のメリット

わざわざ学会に行かなくても、学会に行ったのと同等の経験ができるというのが、 e-casebook LIVEの一番のメリットだと思います。自宅にいながら手術ライブ中継を見て、オペレーターの考え方や手技について自由な意見交換をしながら参加できるのは、とてもいいことだと思います。
また、リアル学会の場合、同じカテーテルというジャンルでもStructure(心構造)、Coronary(冠動脈)、Peripheral(末梢血管)と分野ごとに会場が分かれて、どうしても見逃してしまう講演や発表があるのです。それもオンラインにすることで、アーカイブビデオも残り、後から時間や場所を選ばず興味のある分野の動画を後から見ることができる。これは最大の強みです。
例えば、SHD(構造的心疾患)治療は新しく、まだまだこれから発展していく分野なので、症例がたくさんあるわけではありません。だからこそ e-casebook のサービスにあるような、アーカイブビデオで経験をシェアするのが非常に大事なことです。TAVIだけでなく、Mitra Clip(経皮的僧帽弁形成術)、WATCHMAN(左心耳閉鎖システム)、PFO(卵円孔開存)に対するカテーテル治療、ASD(心房中隔欠損症)に対するカテーテル治療など、より細かな手技動画をWeb上に貯めておけば、例えば自分が担当した患者さんの治療で困ったときにすぐに症例を見つけられてとても便利です。リアルな体験とアーカイブ、双方のメリットを兼ね備えたe-casebook は、発信する側からも、情報を受ける側からも大事な場所だと思います。

将来的にはオープンなコンテンツも

ビデオライブラリーとしてどんどん使っていきたいので、コンテンツや手技ごとに分けて、検索して目当ての動画をすぐに引っ張り出してこれるようにしてもらえるといいなと思います。特にSHD(構造的心疾患)治療では大事になってくると思います。
個人的には、医師だけではなく、患者さんにも視聴してもらえるようなオープンコンテンツも出せるようになってほしいですね。e-casebookの対象が今のところ医師・医療従事者限定ですが、それだけではなく一般の患者さんに向けて。実際のカテーテル治療の様子などは、治療を受ける患者さんも気になるところです。このような配信があると視聴者も増えるし、患者さん自身の精神的な安定にも繋がれば、e-casebook の可能性も今後ますます高まっていくのではないでしょうか。