DOCTOR'S VOICES

CASE#011若手医師に術技を指導するプロクターライブ配信

タッグで挑む!「本当の」プロクターライブとは

若手医師がオペレーター(術者)を務め、経験豊富なマスターオペレーターがセコンドにつき指導するプロクターライブが近年、カテーテル研究会のプログラムの1つとして行われるようになった。木下氏は、当ライブでプロクター(指導医)として参加し、2019年8月にe-casebook LIVEで「分岐部病変にこだわる」をライブ配信した。
若手医師の技術の底上げに取り組みたいと木下氏は意気込む。

豊橋ハートセンター 循環器内科 部長

木下 順久 氏

プロクターライブとは

2019年、豊橋ハートセンターが主催する東海ライブ研究会において、「プロクターライブ」の開催が始まりました。複雑病変の治療の経験の少ない若手医師に、シニア医師がプロクター(指導医)として付き添い、術前検討から手技終了までライブ中継を行います。術者側、プロクター側双方にオブザーバーが配置され評価されます。それにより若手医師は技術が向上し、シニア医師はコメンテーターから教え方のフィードバックをもらうことができ、術者・指導医両方の育成が実現する、新しい形の手術ライブです。

若手技術者とシニア指導者双方を育成する

最初にこのライブのコンセプトを聞いたときは、手術ライブを一度も経験したことのない若手医師にオペレーターをやらせて、万が一問題が起こったら、と考えずにはいられませんでした。ライブの開催自体、難しいものがあるのではないかと。しかし、実際に行ってみると、若手医師は非常に前向きに取り組んでいました。その充実感に満ちた顔を見て、このような機会を与えることは大事なんだと実感したのです。
2回目のライブは、2019年5月の豊橋ライブデモンストレーションコースで行いました。そのときはもうみんな要領を得ており、過度な緊張感などは少しも感じさせず、むしろやる気に満ちていました。事前にプロクターとともにしっかり症例検討し、術中ではアドバイスを受けながら手技を進めていくことによって、若手医師は、自身の限界を超えた治療ができたという達成感と、新しい知識を身に付けることができた満足感を得ているのではないでしょうか。
これまで各地で行われてきたプロクターライブは、ある程度経験のあるオペレーターを選んでおり、それは本当の意味でのプロクターライブではないと今では思っています。プロクターも、オペレーターとしてはベテランでも、自分ができる手技を人に教える時は自分の中で情報を整理して伝えなければなりません。経験のない若手医師にオペレーターの役割を振ってこそ、プロクターの真価も問われる。この2回目のライブでは3人のプロクターがいて、若手医師にどうやってアプローチするのか三者三様で、見ているこちらもすごく勉強になりました。

複数人での症例検討の重要性

通常の臨床現場で、このライブのように徹底的に事前に症例検討するのは稀なことです。もちろん、個人的に相談されれば、すごく話し込むことはありますが。
意外かもしれませんが、簡単な症例もしっかり事前症例検討すれば、若手医師の役に立つことはたくさんあります。若い人の多くは自己流だったり、上司の真似をしながら技術を学びますが、それでは一人前になるまで時間がかかると思うんです。例えば、見よう見まねで5年かけて身に付ける技術は、きちんとした検証およびアドバイスを得られたら2年半くらいで習得できるかもしれない。そうすると、残りの時間をもっと有効に使えます。若い人にとって一番成長する時期に、無駄な時間を過ごさせたくありません。
また、自分1人で考えていても、自分の殻を出ることはできませんが、2~3人で話し合うと、自分も思いつかなかった方法が出てきて、治療法に幅が出てきます。例えば、じっくり話合って、一番いい方法はプランA、それが駄目だったらプランB、それでも駄目だったらプランCという風に前もって戦略を立てておくと、術者は自身をもって治療できます。
複数人での事前症例検討は、ライブにおいても臨床現場においても重要です。お互い納得するまで話し合って初めて、治療方針がぶれることなくスムーズに治療が進み、これが若手医師にとって、とても有効な経験となるのです。

プロクターライブをオンライン配信、アーカイブビデオにすることで若手医師の技術を一挙に引上げ

カテーテル治療のお手伝いに帝京大学にお伺いした際、上妻教授から「よくあれだけ我慢して若い先生に教えられるね。僕だったらすぐに取り上げて自分で治療しちゃうよ。」って声をかけられて。「確かに、取り上げるのは簡単なんですけど、そうすると人が育たないですからね。」と事もあろうに上から目線で言ってしまいました(笑)。その会話がきっかけでプロクターライブをe-casebookで配信しようという話になり、2019年8月に、帝京大学でのライブワークショップ「分岐部病変にこだわる」の配信が実現しました。
ライブ配信をしてみての感想ですが、上妻教授と僕が喋りすぎて、もう少しオペレーターにフォーカスしてあげればよかったなと反省点はあります。たくさん好評もいただきましたが、配信日時が丁度平日の診察時間帯だったので「見たくても見られなかった」とのお声もいただきました。
人を教育する媒体として、e-casebook LIVEは本当に素晴らしいサービスだと思います。生放送ライブでは、主催者と視聴者がチャット機能を使って自由に症例検討できます。生放送に参加できない医師もたくさんいるので、様々な分野や治療法にフォーカスしたアーカイブビデオは、後で好きな時間に見ることができてとても便利です。

ニッチなコンテンツもあれば更にe-casebook LIVEが充実

一般的に言えることなのですが、せっかくいい手術ライブをしても、若い医師が見たときにその人が理解できる内容になっていなければ、若手の技術の底上げは難しいと感じます。なので若手医師の技術底上げの観点から、日常臨床で役に立つコンテンツをどんどん配信したらいいのではないでしょうか。
ライブ配信時間は課題だと思います。僕が実際見た光景なのですが、他院へ治療しに行ったとき誰かのPCでe-casebook LIVEの放送画面が出ているのにも関わらず、誰もそれを見ていなくて。みんな仕事に行ってしまってるんですね。今後放送するときは、人が見てくれる時間帯に放送するといいと思います。
そして、これはもしかしたら視聴率は低くはなりそうですが、ニッチな医師しか参加しないような研究会のコンテンツを配信するのもいいと思います。自分から研究会に出向くほどの意志がなくても、Webで気軽に見られるなら見てしまうということもあるので。そういったコンテンツは意外と興味深かったりするし、みんなに知ってもらうきっかけ作りをe-casebookでやっても面白いと思います。